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聴覚情報処理障害(APD)

【ご注意】本ページは情報共有のみのサイトです。当院ではAPDの診療は行っておりませんのでご了承ください。

「聞こえているはずなのに、ことばが頭に入ってこない」「雑音があると会話がついていけない」こうしたお悩みの背景に、「聴覚情報処理障害(APD)」という状態が隠れていることがあります。難聴とは異なり、耳自体は正常であるにもかかわらず起こる現象です。

 

1.聴覚情報処理障害(APD)とは?

聴覚情報処理障害(APD:Auditory Processing Disorder)とは、耳で音をキャッチする力(聴力)はほぼ正常なのに、その音を脳で理解したり整理したりする力に困難がある状態を指します。

一般的な聴力検査では「異常なし」と言われる方も多く、「聞こえない」のではなく「聞き取りにくい・意味が入ってこない」というのが特徴です。

子どもの学習や集団生活での聞き取りの困りごととして見つかることが多いですが、大人になってから気づくケースもあります。

APDは、耳の病気だけでなく、脳での音の処理機能に関わる問題として理解されており、適切な理解と周囲の配慮がとても大切です。

 

2.聴覚情報処理障害(APD)の原因

聴覚情報処理障害は単一の要因によって引き起こされるものではなく、複数の背景が複雑に関与していると考えられています。

(1)脳における聴覚処理システムの個人差

音の高さや長さ、順番、左右からの聞こえ方などを処理する脳の働きに、生まれつきの特性や発達上の偏りがあると、聞き取りにくさとして現れることがあります。

(2)発達に関連する要因

・注意力やことばの発達、学習の特性などと関係している場合があります。

・注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などと一緒にみられることもあります。

(3)幼少期の環境・病気の影響

・乳幼児期に中耳炎をくり返し、十分な聴覚刺激を受けられなかった場合に、結果として聴覚情報処理能力の発達に影響を及ぼす可能性が示唆されています。

・早産、低出生体重、脳の発達や酸素不足の影響などが関係する場合もあります。

(4)後天的な脳の障害

・事故や脳梗塞、脳炎などで中枢の聴覚経路が傷ついた場合に、成人でAPDのような症状が生じることがあります。

現時点では、はっきりとした原因が特定できないことも多く、「性格の問題」「やる気の問題」と誤解されてしまうことがありますが、医学的な背景がある可能性を知っておくことが大切です。

 

3.聴覚情報処理障害(APD)の主な症状

APDの症状は人によってさまざまですが、代表的なものは次のような特徴です。

(1)雑音があると話が聞き取りづらい

・教室、職場、飲食店など、周囲がざわざわしていると、相手の声だけを聞き分けることが難しくなります。

・「誰かが話していることはわかるが、内容が追いつかない」と感じる方もいます。

(2)早口や長い指示が理解しにくい

・一度にいくつもの指示をされると、途中でわからなくなってしまう。

・電話の会話やアナウンスなど、視覚情報がない場面で特に困りやすい傾向があります。

(3)聞き間違い・聞き返しが多い

・似た音の言葉を聞き間違えやすい。

・「え?」「もう一度言ってください」と繰り返し聞き返すことが多く、誤解やトラブルにつながることもあります。

(4)聞くことに強い疲れを感じる

・会議や授業のあとに、他の人よりぐったりと疲れる。

・集中して聞こうとすると、ほかのことに注意を向けられなくなることがあります。

(5)学習や仕事への影響

・授業の内容を聞き逃してしまい、勉強の遅れやテストの点数低下につながることがあります。

・社会人では、会議の内容が頭に残りにくい、口頭での指示をよく間違えるなどの形で現れます。

これらの症状は、難聴、発達障害、注意の問題などと重なって見えることも多いため、専門家の評価が重要です。

 

4.聴覚情報処理障害(APD)の診断

APDは、一般的な聴力検査だけでは判断できません。耳鼻咽喉科では、次のような流れで総合的に評価していきます。

(1)詳しい問診

・いつ頃から困りごとが出てきたか、どのような場面で聞き取りにくさを感じるか、学校や仕事での様子、既往歴や発達歴などを丁寧にお伺いします。

・ご家族や学校の先生からの情報も参考になります。

(2)聴力検査(末梢の聞こえの確認)

・純音聴力検査などで、耳自体の聞こえに問題がないかを調べます。

・APDの方では、ここが正常〜ほぼ正常であることが多いのが特徴です。

(3)中枢聴覚機能の検査

・雑音の中でのことばの聞き取り、

・左右の耳に違う音を同時に聞かせて処理する検査、

・ことばや音の順番・タイミングを認識する検査など、脳での音の処理能力を調べる検査を組み合わせて行います。

 

5.聴覚情報処理障害(APD)の治療・支援

※当院では実施していません。参考資料としてお使いください。

現時点で「これをすれば完全に治る」という薬や手術はありませんが、環境の工夫やトレーニングにより、生活のしやすさを大きく改善することが可能です。

(1)環境調整・コミュニケーションの工夫

・話し手の近くに座る、話している人の顔が見える位置にする。

・テレビ・音楽・雑音をできるだけ減らした静かな環境で話をする。

・ゆっくり、はっきり、区切って話す。

・大事なことは、口頭だけでなく紙に書く・メールで共有するなど、視覚的な情報も併用する。

(2)聴覚トレーニング・リハビリテーション

・言語聴覚士によるトレーニングで、音の識別、雑音下での聞き取り、音の順序の理解などを少しずつ練習します。

・個々の困りごとに合わせてプログラムを調整し、継続することで改善が期待できます。

(3)補助機器の活用

・学校や会議などで、話し手がマイクを使い、聞き手が受信機で直接音声を受け取るFMシステム・デジタルワイヤレスマイクなどが役立つことがあります。

・どの機器が適しているかは、検査結果や生活環境を踏まえて検討します。

(4)合併する問題への対応

・ADHDや自閉スペクトラム症、学習障害などがある場合は、それぞれに応じた治療・支援(薬物療法、行動療法、学習支援など)を行うことで、全体としての困りごとが軽くなることがあります。

(5)学校・職場との連携

・学校では、座席の工夫、板書の配慮、プリントの事前配布、口頭指示の繰り返しなどをお願いすることで、学習への参加がしやすくなります。

・職場でも、会議資料の共有やメールでの指示、静かな打ち合わせスペースの利用など、小さな工夫が大きな助けになります。

 

6.聴覚情報処理障害(APD)のまとめ

聴覚情報処理障害(APD)は、耳の聞こえはほぼ正常でも、音声を脳で処理する部分に困難がある状態です。

完全に「治す」薬はありませんが、環境調整、コミュニケーションの工夫、聴覚トレーニング、補助機器の活用、学校・職場との連携によって、日常生活や学習・仕事の負担を大きく減らすことができます。

「聞き漏れが多いのは自分の努力不足」と責めてしまう方も少なくありませんが、背景には医学的な要因がある場合があります。気になる症状が続くときは、一人で悩まず、耳鼻咽喉科・専門外来にご相談ください。

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